広報誌との連携でインスタ刷新 1年でフォロワー2倍に
【病院広報アワード】信頼性のある情報を発信
【広報担当部門 大賞】
医療法人神甲会隈病院(神戸市中央区)
管理本部企画課 宮崎沙耶加(みやざき・さやか)さん
甲状腺疾患専門の隈病院がいま一番力を入れている広報活動が、インスタグラムでの情報発信だ。
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甲状腺は特に30-50歳代の女性に多い病気であるため、その患者層に響く最適なツールがインスタだと考え、同病院では5年ほど前にアカウントを開設した。
2年前にはインスタをコンセプトから見直し、広報誌の発行に携わる制作会社からの提案により、デザインのプロの力も借りて大きくリニューアルに踏み切った。その結果、「直近1年間でフォロワー数が約2倍に増えた」と宮崎さんは効果を口にする。
甲状腺疾患は慢性症状に悩む人が多く、他の疾患との区別がつきにくいこともあり、インターネット上に氾濫する情報で患者が混乱し、治療の開始が遅れてしまうケースも少なくない。
そのため、同病院では甲状腺の専門病院であることや、専門医が監修していることを明示して甲状腺に関する情報を発信。その際に最も心掛けているのは、正確な情報を分かりやすく伝えてユーザーからの信頼を得ることだ。医師が監修する疾患情報の投稿は好評で、「医療機関だからこそできる信頼性のある情報発信」に力を入れている。
加えて、同病院には数年から何十年という長期で通院する患者も多いことから、「おっくうになりがちな通院の後押しになればと、地域の皆さまにご協力いただき、病院周辺のおいしいご飯屋さんやスイーツのお店なども紹介している」(宮崎さん)。
情報の投稿は、月に10回程度。ユーザーの反応がよい疾患情報記事や職員食堂、入院患者の食事など「食」の記事には、ショート動画を共有できるリールや、スライドショーのような形式で画像や動画を投稿できるストーリーといった機能も活用している。
同病院では、医師をはじめとして看護師や臨床検査技師、管理栄養士など多職種による職員の取り組みが投稿の大部分を支える。こうした病院全体の協力を得るため、「広報に対する負担を最小限に抑えて、まずは広報の効果を感じてもらうことが重要で、そういう意味でSNSは最適だと感じた」と宮崎さんは話す。
広報誌と連携したインスタを運用することで、現場の負担を必要以上に増やさないことに加え、現場から届いた情報をウェブサイトやユーチューブなど多彩なチャネルで発信して可能な限り露出を高めることを意識しているという。
同病院が病院広報アワードに応募したのは今回が初めてで、広報誌部門とSNS部門でエントリーした。宮崎さんは「病院の取り組みを効果的に伝える広報の重要性は今後高まりつつも、働き方改革などの流れの中で実際の運用には今後も課題が増えてくるのでは」と懸念を口にしつつも、「だからこそ、多職種の職員が自発的に提供してくれた現場に即した大切な情報を患者さんに分かりやすく届ける、その意識に共感してもらえたのかもしれません」と受賞の要因について語る。
2022年12月に創立90年を迎えた隈病院。昨年は大規模な増改築工事を終え、地域の人も利用できる多目的ホールを新設した。そこでは甲状腺疾患やその医療、同病院の取り組みなどを知ってもらう地域公開講座を定期的に行う予定だ。第1回を8月に開催する。宮崎さんは「対面式のリアルなつながりにも力を入れていきたい」と意気込む。【松村秀士】
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